Sちゃんは、一旦家の中に入って、直ぐに虫取り網を持って走って来て、俺たちに言った。
「 よし、行くぞ!」
Sちゃんは、男物のよれよれの麦藁帽子を被っていた。
俺とTは、不思議な奴が現れたと思った。
女の子で虫取りに行く奴は、今まで見たことが無かったからだ。
俺は、Sちゃんに言った。
「 お前、山に行って、付いて来れへんかったら、置いて行くで。」
「 やかましい!
あんた等こそ、何所に虫がいるのか分かるの?」
俺とTは、呆気にとられた。
話を聞くと、どうやら岡山で、男の子と一緒に虫取りをよくやっていたらしい。
実際、Sちゃんは、山に行くと、虫の集まる樹液の出る木を良く知っていたし、行動も素早かった。
俺たちは、Sちゃんを仲間と認めた。
それは、あっさりした性格で、目のパッチリしたかわいい子だった事も影響していたと思う。
どういう訳か、Sちゃんがいる時は不思議とおばばに悪いことがばれなかった。
俺とTの二人の時は、直ぐに悪事がばれて、しばかれた。
水事件の時も、Sちゃんが岡山に帰ってから起きた事件だ。
母の実家に行く事を楽しみにしていた俺の最大の理由は、Tと遊べるのは当然だが、Sちゃんと遊べることがさらに大きかったように思う。
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