私は座り直して、不安定な尻の辺りをモゾモゾしていると、大家さんがやって来ました。
大家さんは、60歳手前ぐらいの太って貫禄のあるオッチャンで和服を着ていました。
「 挨拶は、君かね。」
「 はい。」
「 今どき、挨拶に来るのも珍しいね。」
「 これから、お世話になりますから・・。」
「 ああ、そうだね。」
「 よろしくお願いします。」
「 あ、よろしく。」
「 ところで・・・、あの。
これ、ポストに入っていたんですけど・・。」
「 手紙?」
「 大家さんからかも知れないと思いましたので・・。」
「 ワシじゃ無いよ。」
「 そうですか・・。」
「 おたくに来たものだろ。」
「 でも、宛先も差出人も書いてないんですよ。
前に住んでいた人に出した物じゃないでしょうか・・。
私はまだ引越し先を、あちこち連絡していないので・・・。」
「 そうかもしれないが、一応、持っていなさい。」
「 いいんですか?
転送した方がよくはありませんか?」
「 でも、前に住んでいた人の引越し先を知らないし、その人の物とは限らないだろ。
少なくとも、あなたが入居するまで郵便物は入ってなかったと聞くし・・・。
それは、あなた宛だよ。」
「 はあ・・・。」
「 誰か、あなたを好きになった人が入れたんじゃないかね。」
「 えっ、思い当たりませんが・・・。」
「 じゃ。」
大家さんは腰を浮かせました。
おそらく、土産も無しに突然やって来たので、相手をするのが面倒になったのでしょう。
もう、話を切り上げたそうに見えました。
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