栞17 

 次の日、私は加奈ちゃんに会いました。
エスピウェールは、給料を貰った後、ちょっとリッチな気分のときに行くレストランです。
勤めていた頃は、夜に行くことが多かったのですが、昼食もランチメニューがあって慣れたところです。
ブラウンベースの色調に統一された落ち着いた雰囲気のレストランです。
 加奈ちゃんは先に来てテーブルについて待っていました。
私の顔を見ると、ニコッと笑って直ぐに席に促しました。

「 はい、座って座って。」
「 まだ、12時には、10分あるわよ。
 急がない、急がない。」
「 お腹空いたよぉ〜。」
「 相変わらずね。」

 私は、席に着き、話し始めると二週間の内にこんなにも色々なことが起こっているのかと言うくらい、事件が起こっていました。
もっとも、事件といっても、失敗談や噂話で警察のお世話になるようなことはありません。
昼食を食べ終わって、食後のコーヒーを飲んでいるとき、加奈ちゃんが言いました。

「 高木さん、もう、笑ってしまうわ。」
「 遅刻の常習者の高木さん?」
「 そうよ、目覚まし時計の電池が切れていた例の高木さん。
 一週間に二回も電池が切れることってある?」
「 ないない。」
「 それで、前置きがあるのよ。
 お昼に食堂で、総務の女の子三人で話をしてたのよ。
 その時、駅で見た変な人って話になったの。
 私、前に見た人の話をしたわ。」
「 どんな人?」



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[ 2007/12/17 19:30 ] | TB(0) | CM(0)

栞16 

 チョコを入れる袋は別々にして欲しいと、ショーケースの横で受付をしていた女性の店員さんに言いました。

「 かしこまりました。
 少々、お待ち下さい。」

受付の女性は、二つのチョコのセットを持ち、奥に居たもう一人の店員さんに事情を説明し渡しました。
 そして、その店員さんは、チョコを受け取って、私たちの顔を見て、それぞれを丁寧に包装してくれました。
博美のチョコは赤地を主体に金の線の入った明るい包装です。
私のチョコは、黒地に赤と金の筋の入ったシックな物になっていました。
 お菓子屋さんも買い手の年齢を見て包装をするものだと感心しました。
でも、義理チョコは、やっぱり義理チョコです。
二つは同じ包装がされていました。

「 有難うございました。」

 女性の店員さんの声を後ろに、私たちは、袋をそれぞれ持ち、お菓子屋さんを後にしました。
自動車に乗ってマンションに帰る途中、博美が私に言いました。

「 母さん、父さんが帰ってくるのは、バレンタインよりあとになるよ。」
「 そうよね、バレンタインより四日あとだわ。
 でも、チョコレートだから、腐らないからだいじょうぶよ。」
「 そうよね、母さん腐らない物でよかったね。」
「 そうね。
 シュークリームなら腐ってるかも・・・ふふ。」
「 四日もたてば味が変になってるわ。
 シュ−クリームでなくてよかったね。」
「 そうね。」

私たちは、それぞれ、チョコをキープしました。



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[ 2007/12/13 18:27 ] | TB(0) | CM(0)

栞15 

 博美が来ました。
チョコレートを二つ持っています。
四つほど入った大きな物と一口サイズの小さな物のふたつです。

「 あら、二つ買うの?」
「 そうよ。
 こっちの小さい方は義理チョコよ。」
「 へ〜、義理チョコなんて言葉知ってるんだ。」
「 知ってるわよ。」
「 義理チョコは誰にあげるの?
 保育所の先生?」
「 違うわ。
 母さんよ。」
「 義理チョコでも嬉しいわ。
 でも、人にあげちゃえば博美の食べる分が無いじゃない。」
「 だから、母さんも博美に義理チョコを渡すのよ。」
「 そうか、私も渡せばいいのか。」
「 そうよ。」
「 そちらの大きい方は誰にあげるの?
 保育所の子?」
「 さあ、誰でしょう?」
「 あらっ、教えてくれないの・・。
 まあ、いいわ。
 私はパパに買ってあげるわ。」

私は、三つ入りのチョコレートと、博美の買ったものと同じ義理チョコを買いました。
博美も多分この義理チョコを食べたがっていると思ったからです。
 博美が私の買ったチョコを見て言いました。

「 義理チョコ、私のと同じね。」
「 そうよ、これでいいでしょ。」
「 分かってるわね。」
「 ふふふ。」
「 ふふふ。」

私たちは、チョコを二つずつ買いました。



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[ 2007/12/10 18:06 ] | TB(0) | CM(0)

栞14 

 スーパーに着いて、一通り食材を買いました。
次はチョコレートです。
スーパーに併設されている専門街にあるお菓子屋さんに行きました。
 お菓子屋さんには、たくさんの種類のチョコレートが並んでいました。
どのチョコレートも色とりどりで綺麗に包装されています。
一年間の儲けを、このバレンタインで一気に取ろうとする商魂には凄まじい物があるなぁと思いました。
義理チョコだけでもかなりな売り上げがあるでしょう。
勤めていた会社でもバレンタインには、たくさんの義理チョコが乱舞していました。
 博美が言いました。

「 うわ〜、たくさんある。」
「 気に入ったのを選んで。」
「 うん。」

博美は、店の中をウロウロしながらチョコレートを選び始めました。
 私は夫にチョコレートを買うことにしました。
私が夫にチョコレートを渡したのは、一度しかありません。
交際して、半年後のバレンタインに渡したきりです。
一年半弱付き合って結婚しました。
その間にあったバレンタインは一度だけだったのです。
 その後は、チョコレートは、例の件もあり避けていました。
夫が、二週間の出張から帰って来たら、もうバレンタインは4日ほど過ぎていますが、出張のお疲れ様プレゼントにしようと思いました。



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[ 2007/12/04 18:56 ] | TB(0) | CM(0)

栞13 

 私の心の傷は大きく残りました。
それ以降、バレンタインは私の苦い思い出として私の心に生き続けています。
それで、チョコを誰かにあげる事は、ずっとしていなかったのです。
でも、もう、何年も経ったのですから、そこから抜け出さなくてはいけないと、ようやく最近思うようになりました。
だから、私は、今日、博美とチョコを買いに行くことにしたんです。
 時計が四回鳴りました。
そろそろ、夕食の準備です。
私は、台所の冷蔵庫を調べ始めました。
そこへ、部屋で遊んでいた博美がやって来ました。

「 ねえ、スーパーは?」
「 あ、行く、行く。
 今、冷蔵庫を調べているのよ。
 夕食の材料を買ってこなくっちゃ。」
「 何にするの?」
「 博美の好きなハンバーグにするわ。」
「 良かった。」
「 挽き肉と・・・。
 玉ねぎが無いわ。
 それに、サラダにする野菜もいるわね。」
「 それにチョコレートもよ。」
「 そう、それを買わなきゃだめね。
 行きましょうか。」
「 うん。」

今日は、博美と一緒にスーパーで買い物です。
スーパーは、マンションから車で10分ぐらいの所にあります。
車に乗って出発です。


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[ 2007/12/01 16:26 ] | TB(0) | CM(0)
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