すると、Yが、俺だって見たぞと言い出した。
「 去年の夏休みに初めて自動車を買って、一人であちこち走り回って乗り心地を試してたんや。
友達が新車を買うって聞いて、今まで乗っていた車を安くで譲って貰った。
結構古い車やったし、スピードがどのくらい出るのか分からんかったので試してみようと思ってな。
そんで、普通の道路は止めて、名神高速道路を走ることにした。
昼は、車の通行量が多いし、トラックがノロノロしとるので邪魔やろ。
夜に走ることにした。
夜やったら、空いてるしな。
夜の11時頃、茨城インターから高速に乗って京都方面へ走ったんや。
雨が降ってた、て言うたら雰囲気出るんやけど、空は曇っとったわ。
中古の車の割りに、よぉ走ったわ。
140キロぐらいで、車体が分解しそうにガタガタ揺れとったけど。
しばらく走ると、大阪と京都の境にトンネルがあるやろ。
そこなんやわ。
トンネルに近付くにつれて、入り口付近、トンネルの左の路肩やわ。
道路の横やがな。
何か白っぽいものが見え始めたんや。
何やろ、と思て見とったんや。
近付くと、薄いピンク色の服を着た髪の長い若い女の人が立っているのが見えたんや。
髪の隙間から、僅かに白っぽい顔がのぞいてたわ。
高速道路に人が立っているのはおかしいなと思ったけど、スピード出てるやろ。
一瞬で通り過ぎたわ。
トンネルに入って、何やったんやろとバックミラーを見たんや。
うわっ、と思たわ。
来よったんや。
鏡にだんだんとさっきの若い女が、空中を滑りながら追いついて来るんや。
ムチャクチャ、びびったで。
気持ち悪いがな。
車の中、俺、一人やで。
アクセルを思いっきり踏んで逃げたんや。
そいつ近付いて来るんや。
スピード出てるし、トンネルはカーブしてるし、後ろは気になるし必死やったで。
バックミラーに映っとんにゃ。
髪が風に散らされて、無表情の白いのっぺりした顔が見えたわ。
変なんや。
薄いピンクの服は、接近するに従って真っ赤に変わってたわ。
追いつかれたと思った瞬間、ぶわっと女は車を後ろから前へ突き抜けて行ったんや。
車の中やで。
俺の横を、空気の塊みたいなもんが通過したんや。
通過したら、そいつは見えなくなった。
前には、もうヘッドライトの明かりだけや。
もう直ぐでトンネルの出口が見えてくるし、早くトンネルから出たかったわ。
ひょっとして、トンネルの出口にいるんとちゃうかと思ったんやけど、無事、出口は通過したわ。
それで、ほっとして、バックミラーでトンネルの出口をチラッと見たんや。
おらんかったわ。
暗いトンネルの出口が見えただけや。
それから、そいつが車の中に乗っとらへんか心配で周りを見たけど大丈夫やったわ。
その後、引き返すのも気持ち悪いし、京都南インターで高速を降りて、171号線で大阪に戻ったんや。
あれは、その場所に縛られている地縛霊やろな。
帰る途中、171号線から、あの辺がトンネルやったなと高速道路を見上げたとき、一人で夜走るのは当分止めておこかと思たわ。
Zの場合は、家に憑いているから家縛霊ってとこかな。
他にも、電柱に映った影なんて浮遊霊もあるで。
どうや、まいったか。
はい、まだ話をしていない奴、はなし、はなし!
何か経験あるやろ。」
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