廃墟1 

    廃墟

 9月始めのまだ暑さが残っている時期だった。
私は、大学の学生食堂の前でZに会って声をかけた。

「 この前の夜はお疲れさん。」
「 やあ、どうもどうも。」

Zは、いつもの調子で笑顔で答えた。
 Zと私は、同じワンルームマンションに住んでいる。
私が3階でZは2階だ。
1回生の始め、同じ時間に同じマンションから出て行き、同じ電車に乗って二駅離れた同じ大阪の大学の同じ学部に通っている人間を発見した。
 朝夕、顔を何回か会わしているうち、話をするようになって友達付き合いが始まった。
私は、京都生まれなので、大阪の大学まで通学は可能だったが、下宿を希望して家を出た。
Zの出身は、隣の家まで4キロもある山形県の山奥の村だった。
本当に都会ずれしていない素朴な男で、妙な素直さと誠実さを持っている。
 私とは、Zから言わせると、共通部分もあって話していると馬が合うことが分かると言う。
人は、自分に無いものを持ったものを求めるとは言うが、何が共通部分か何処が違うのか分からないまま、2人とも3回生になった。
最近では、時間割が違っていて行き帰りが同じことは極端に減ったが、それでも大学でよく出くわした。

「 昼飯、食べよか。」
「 そやな、膝はどうや。」
「 直ったと思う。」
「 うん。」

 Zは、変な関西弁で答え頷いた。
関西弁は、あくが強いので言語に影響を与えるようだ。
学生食堂で、昼のランチをテーブルを挟んで食べながら、話題は先週のことに移っていった。



☆奇妙な物語HOMEページに戻る。
  奇妙な物語HOMEページ
[ 2007/01/23 18:15 ] 廃墟 | TB(0) | CM(0)

廃墟2 

 話の始まりは8月下旬だった。
例年なら、8月の末まで実家に帰っているZがアルバイトの人員不足の埋め合わせで大阪に戻ってきていた。
2週間ほど会っていなかったので、友人のYを呼んで、Zの部屋で酒を飲むことにした。
 Yは、大学の同級生で、入学直後に私とZが隣同士に教室で座ったとき、前の席から振り返り大阪人特有の人懐っこさで話しかけて来たのが縁の友達である。
3人それぞれ違いはあるが、妙に馬があってよく行き来していた。
Yは、2人とは駅を挟んで反対側のワンルームマンションに家賃ただで住んでいる。
もともとYは大阪の地元の人間で、地元の高校を卒業して、親が経営しているワンルームマンションに一人で生活していた。
実家は、マンションから歩いて10分程の所にある和風建築の裕福そうな大きな家である。
 夜に3人でZの部屋で酒を飲んでうだうだ喋っているとき、何かのきっかけでZが座敷わらしを小さい頃見たと言い出した。

「 小学校に入る前の年の秋、山形の実家で座敷わらしを見た。
僕が、2階で昼寝をしていると、階段をトントントンと上がってくる足音がする。
兄は父と買い物に出て行ったし、母にしては足音が軽いなと思った。
他に誰もいないし、母の客でも来ているのかなと思って階段の方を見ると自分より少し小柄な男の子が上がってきて声をかけた。

『おにいちゃん、あそぼ。』

母の友達の子かなと思った。
鬼ごっこをしようと言うので、2階の廊下や3つある部屋を2人で走り回った。
しばらくして、1階から母の声がした。

『走るな!!』

その声に驚いて、階段の方を見た。
そして、後ろを走っていたその子の方を振り返ったら、もうその子はいなくなっていた。
おかしいなと思って、階段を下りていくと玄関に母がいた。
小柄な男の子と鬼ごっこをしていたと説明すると、そんな子は来ていないと言われて、母と一緒に2階を見に行ったが、誰もいなかった。
帰ってきた兄と父にその話をしたら、父が言った。

『 それは座敷わらしじゃないかな、遠野物語だな。
座敷わらしは、家を守ってくれるからよかったな。』

そう言われたとき、よかったんだと安心したのを覚えている。
見たのは、それ一回きりでその後は見たことは無い。
あとは、特に不思議なものを見た記憶は無いね。」



☆奇妙な物語HOMEページに戻る。
  奇妙な物語HOMEページ
[ 2007/01/23 18:14 ] 廃墟 | TB(0) | CM(0)

廃墟3 

 すると、Yが、俺だって見たぞと言い出した。

「 去年の夏休みに初めて自動車を買って、一人であちこち走り回って乗り心地を試してたんや。
友達が新車を買うって聞いて、今まで乗っていた車を安くで譲って貰った。
結構古い車やったし、スピードがどのくらい出るのか分からんかったので試してみようと思ってな。
そんで、普通の道路は止めて、名神高速道路を走ることにした。
 昼は、車の通行量が多いし、トラックがノロノロしとるので邪魔やろ。
夜に走ることにした。
夜やったら、空いてるしな。
夜の11時頃、茨城インターから高速に乗って京都方面へ走ったんや。
雨が降ってた、て言うたら雰囲気出るんやけど、空は曇っとったわ。
中古の車の割りに、よぉ走ったわ。
140キロぐらいで、車体が分解しそうにガタガタ揺れとったけど。
 しばらく走ると、大阪と京都の境にトンネルがあるやろ。
そこなんやわ。
トンネルに近付くにつれて、入り口付近、トンネルの左の路肩やわ。
道路の横やがな。
何か白っぽいものが見え始めたんや。
何やろ、と思て見とったんや。
近付くと、薄いピンク色の服を着た髪の長い若い女の人が立っているのが見えたんや。
髪の隙間から、僅かに白っぽい顔がのぞいてたわ。
高速道路に人が立っているのはおかしいなと思ったけど、スピード出てるやろ。
一瞬で通り過ぎたわ。
 トンネルに入って、何やったんやろとバックミラーを見たんや。
うわっ、と思たわ。
来よったんや。
鏡にだんだんとさっきの若い女が、空中を滑りながら追いついて来るんや。
ムチャクチャ、びびったで。
気持ち悪いがな。
車の中、俺、一人やで。
アクセルを思いっきり踏んで逃げたんや。
 そいつ近付いて来るんや。
スピード出てるし、トンネルはカーブしてるし、後ろは気になるし必死やったで。
バックミラーに映っとんにゃ。
髪が風に散らされて、無表情の白いのっぺりした顔が見えたわ。
変なんや。
薄いピンクの服は、接近するに従って真っ赤に変わってたわ。
追いつかれたと思った瞬間、ぶわっと女は車を後ろから前へ突き抜けて行ったんや。
車の中やで。
俺の横を、空気の塊みたいなもんが通過したんや。
 通過したら、そいつは見えなくなった。
前には、もうヘッドライトの明かりだけや。
もう直ぐでトンネルの出口が見えてくるし、早くトンネルから出たかったわ。
ひょっとして、トンネルの出口にいるんとちゃうかと思ったんやけど、無事、出口は通過したわ。
それで、ほっとして、バックミラーでトンネルの出口をチラッと見たんや。
おらんかったわ。
暗いトンネルの出口が見えただけや。
それから、そいつが車の中に乗っとらへんか心配で周りを見たけど大丈夫やったわ。
 その後、引き返すのも気持ち悪いし、京都南インターで高速を降りて、171号線で大阪に戻ったんや。
あれは、その場所に縛られている地縛霊やろな。
帰る途中、171号線から、あの辺がトンネルやったなと高速道路を見上げたとき、一人で夜走るのは当分止めておこかと思たわ。
Zの場合は、家に憑いているから家縛霊ってとこかな。
他にも、電柱に映った影なんて浮遊霊もあるで。
どうや、まいったか。
はい、まだ話をしていない奴、はなし、はなし!
何か経験あるやろ。」



☆奇妙な物語HOMEページに戻る。
  奇妙な物語HOMEページ
[ 2007/01/23 18:13 ] 廃墟 | TB(0) | CM(0)

廃墟4 

 Yが私に話を促したので、私は答えた。

「 今までそんな体験が無いからなぁ。
 興味は、あるんだけどな。
 鈍感なのかな。」

そこで、Yが両手をあげて言った。

「 よっしゃ、分かった。
 俺に任せておけ。
 恐怖ネタの一つも無いと女にもてないぜ。
 関西では有名な所があるんや。
 俺もまだ行ったことないし、3人で行こうぜ。
 俺の車で行こうぜ。
 決まり、決まり。
 予定は俺がたてるから、明日連絡するわ。」

 Zは、そりゃそうだ、うん、うんと真面目に頷いた。
私は、興味はあるがとても怖がりでちょっとヤバイかなぁと思ったが、成り行きでOKした。
その宣言を区切りとして、話はバイトの話題に移っていった。


 次の日の夜、Yからメールがあった。

「 3人ともバイトが無い日が、木曜。
 木曜の夜8時に駅前で集合。
 自動車で行くので、差し入れを持って来い。
 ガソリン代は、いらん。
  行き先は、神戸の山手方面にある廃病院。
 元は療養所兼病院だったが、乱脈経営や医療過誤で苦しくなった
 上に、東京の土地投資で失敗して倒産という噂。
 そのまま、ほったらかしである。
 懐中電灯も持って来い。
 Zは、もうOKの返事あり。
 君に、すばらしい出会いがありますように、ひひひ。」

やっぱりヤバイなぁと思った。



☆奇妙な物語HOMEページに戻る。
  奇妙な物語HOMEページ
[ 2007/01/23 18:12 ] 廃墟 | TB(0) | CM(0)

廃墟5 

 そして、木曜がやってきた。
夕方、Zを誘って近くのラーメン屋で夕食をとり、その足で一緒に近くのスーパーで買い出しをした。
いろいろ買っていると結構時間がかかった。
時間を気にしながらマンションまでいったん戻り、Zと2人でスーパーの袋を2つぶら下げ、自転車で駅に向かった。
午後8時10分前に駅前に着いて自転車を駐輪場に置いて、バス停のベンチでYが来るのを待った。
そして、Yは10分遅れで、でかいSUV車でやって来た。
 自動車に乗り込み直ぐに出発した。
初めのうちはわいわい話していたが、一時間ほど経つと静かになった。
FMラジオが、70年代のロックを流していた。
窓から見ると、薄い雲が空を覆い、月はうっすらと弱い光だった。
星は見えなかった。
 国道を左に折れしばらく走ると、小さな橋を越えた。
車のライトが、道を照らしている。
雨が降ってくるかなと窓を少し開けたが、湿度の高い生暖かい風が入ってきたので直ぐに閉めた。
車は、がたがたと大きく振動していた。
結構時間が長く感じられた。
 右手に山を見ながら、住宅地を抜けて木々の間の道をしばらく行くと、四角い建物が道と平行に2棟並んでいるのが見えた。
道には面しているが、周りが木に囲まれていて街灯も無い。
建物の黒く四角い輪郭が、薄曇りの空に浮かんでいた。
門は扉も無く車は駐車場にすんなり入った。
 Yが言った。

「 先客がいるようだ。」

病院の駐車場には、2台のワゴン車が並んで停まっていた。
Yは、ワゴン車と少し距離を置き車を停めた。
 車を降りてワゴン車の様子を窺った。
眼が慣れてきたのか、弱い月明かりでも2グループだということが分かる。
白のワゴン車の前には5人の男ばかりのグループがいた。
黒っぽいワゴン車の前には、男3人女3人の6人のグループがいた。
2グループとも大学生風で、害は無さそうだ。
どちらも病院を遠巻きに眺めているだけで、入って行こうとは思っていないようだった。
 Yが言った。

「 ちょっと、挨拶してくるわ。」

Yは、2グループそれぞれに近付いていって何か話をしていた。
私とZは、自動車の所でYが帰って来るのを待った。



☆奇妙な物語HOMEページに戻る。
  奇妙な物語HOMEページ
[ 2007/01/23 18:11 ] 廃墟 | TB(0) | CM(0)

廃墟6 

 しばらくして、Yが帰ってきた。

「 心霊スポットか何かを調べて来たらしいで。
 関西では、ここ有名やからなぁ。
 あの2グループは、連れやないわ。
 神戸の別々の大学やわ。
 一緒に行こうと誘ってやったのにな。
 懐中電灯とか持ってきてないから、入るのは危ないとか言ってるわ。
  あかんやろ、準備せえよな〜。
 ま、行きたい奴だけついて来いやちゅうて戻ってきたわ。
 ほんまに、あいつら根性無しな連中やで。
 ほな、行こか。」
 
 Yは、後ろを何回か振り向きながら言った。
Yの顔が、勝ち誇ったようにうれしそうだった。
私とZは、懐中電灯をトランクから出してきた。
 Yが言った。

「 三人で順番、決めるで。
 俺、一番後ろ。
 前と真ん中二人で決めろ。」

Yの言葉でホッとした。
一番後ろは嫌だった。
先頭は二番目に嫌だった。
じゃんけんをして、私が勝って真ん中をキープした。

「 何があっても、逃げるなよな。
 逃げる時は、一緒に逃げる。
 分かったな。」

Yの言葉に頷いた。
 駐車場から、建物の中央にある玄関へ歩いた。
4階建てのコンクリートの建物は、窓ガラスが割れあちこちに黒い染みがついていた。
懐中電灯で照らすと、薄く丸い明かりが壁に映った。
 玄関は、シャッターも無く四角い真っ黒な口を開けていた。
3人で縦に並んで玄関を入った。
中は外よりひんやりしていた。
少し広くなったホールの正面に、長い受け付けのカウンターがあった。
奥には崩れた整理棚が見えた。
足元には木の切れ端やスーパーの袋やごみが散乱していた。
壁にはペンキの落書きがあちこちにあった。
ホールから左右に通路がのびていた。
 Zが左へ曲がり2人はそれに続いた。
通路を少し行くと、右にエレベーターの扉があり閉まっていた。
エレベーターの隣に階段があり、上の階と地下につながっていた。
 Zが階段を上にあがった。
足元のごみをよけながら、後に続いた。
Zは、3階まで上がって通路に出た。
通路を左へ少し行くとナースステーションが見えた。
丁度、1階の受け付けの真上かなと思った。



☆奇妙な物語HOMEページに戻る。
  奇妙な物語HOMEページ
[ 2007/01/23 18:10 ] 廃墟 | TB(0) | CM(0)

廃墟7 

 ナースステーションの奥に両開きのドアが見えた。
Yが、入ってみようと言い出した。
私は、もう結構ビビッていたので止めようと言いたかったが、怖がっている事を知られたくなくて肯いた。
先頭のZが、ドアに近付き左のドアをゆっくり開けた。
 Zの動きが止まった。
Zが部屋の中を見ながら言った。

「 誰かいる、そこ・・・。」
「 こら、Z、帰りたいからといって嘘ついたらあかんで!」

Yが、後ろから言った。
私は、足で右の扉をそっと押した。
右のドアがゆっくり開いた。
私は、中を覗き込んだが、室内は暗く何もいないように思った。
でも、Zの体が小刻みに震えている事が私には分かった。

「 いる、こっち見てる・・・。
 怒ってる。
 ハサミが、・・・うわあ、・・・やばいいいいいぃ・・・・ぁああ
 ああ。」

 Zの表情を見た私は、真っ先に階段へ必死で走った。
後ろの通路から、何かを引き摺るような音がしていた。
続いて、Yの叫び声が響いた。

「 逃げろ!!」

 私は、階段を走っていた。
2階の踊り場だったと思う。
後ろから、バタバタと言う足音と共に、Zが私の横を必死の形相で駆け抜けた。

「 うわっ!!」

 私はZと接触し、弾き飛ばされその場で倒れた。
Zは、倒れた私を残してそのまま逃げて行った。
その後ろから、倒れた私を飛び越してYが続いた。
Yは何度も後ろを振り返りながら、不自然な姿勢でノロノロと逃げて行った。
 私は、倒れた拍子に右膝を思い切り階段に打ちつけていた。
膝に激痛が走った。
何かが膝に突き刺さっている気がしたが、置いて行かれた恐怖で私は直ぐに立ち上がって二人の後を追った。
直ぐ後ろを、ハサミを持った看護婦か何かが追いかけてくるようで、パニック状態だった。
私は、もう来ません、ごめんなさい、と謝りながら痛む足を引き摺って走った。
必死で走っている間中、頭の中では追いつかれる追いつかれると小さな呟きが聞こえた。
膝の痛みが頂点だった。
 右膝がガクッと折れ、私は階段の途中に蹲った。
自分の足音が消え、建物は静かになった。
私は暗闇の階段に一人取り残されてしまった。
私は、俯いて謝り続けた。
しばらくして、遠くから足音が近付いてきた。
もうだめだと思った。



☆奇妙な物語HOMEページに戻る。
  奇妙な物語HOMEページ
[ 2007/01/23 18:09 ] 廃墟 | TB(0) | CM(0)

廃墟8 

「 起きろ。」

見上げるとZだった。
厳しい表情だった。

「 背中に乗れ、早く!!」

私は、涙が出るほどうれしかった。
Zは、私を背負って走った。
Zが私を突き飛ばした事は、忘れようと思った。

 建物から出て、車に乗って直ぐに病院を後にした。
二つのワゴン車は、もういなかった。
痛む右膝をそっと見ると血が滲んでいた。
助手席に座っていたZが、心配して聞いた。

「 大丈夫か。」
「 血が滲んでるけど、まあ、大丈夫や。」

私の真前に座っているZに、私は感謝していた。
 Yが、帰る途中にコンビニでタオルを濡らし、消毒液を買ってくれた。
タオルで冷やしていると、だんだんと痛みが引いて行った。
私は、真っ先に逃げたことを悔やんでいた。
ただ、気まずいのでさっきのことは、三人とも意識的に話題にするのを避けていた。
 帰り道では、Yは気を使ってにぎやかに話をしていた。
話が途切れると、以前にYに話したことのあるような出身地とか好き嫌いの話まで持ち出した。
何回も、後ろをうかがいながら運転をしていたので事故を起こさないか心配だった。
暗い窓の外を見ながら、もう心霊スポットには行かないと決めた。
窓ガラスには、薄ぼんやりと反射したYの横顔が映っていた。
 駅前に着いて、Yは送ろうかと言ったが、自転車に乗れそうなので私とZは車を降りた。
車が走り去って、生ぬるい空気を吸いながら、Zと2人で暗い道を自転車でノロノロ走ってマンションに帰った。
時計は、もう午前1時に近かった。



☆奇妙な物語HOMEページに戻る。
  奇妙な物語HOMEページ
[ 2007/01/23 18:08 ] 廃墟 | TB(0) | CM(0)

廃墟9 

 大学の学生食堂で、Zと昼飯を食べるのは3週間ぶりだ。
先週の心霊イベントからは、連絡も無く10日程経っていた。
意識的に、会うことを3人とも避けていたのかもしれない。
ハンバーグを半分ほど食べて、Zが口を開いた。

「 ごめんな、突き飛ばして。
 必死だったんだ。
 3階の扉を開けたとき、白っぽいものが見えたんだ。
 ポスターか人形だよ、きっと。
 落ち着いているように見せかけていたけど、正直なところビビッて
 いた。
 耳鳴りはするし、まいった。
  おまえを突き飛ばして、必死で玄関から外に飛び出した。
 車まで戻って、後ろを振り返ったんだ。
 黒い建物が見えて、Yが玄関から一人で出てきた。
  僕は、後悔していた。
 一生後悔すると思った。
 僕は、玄関を見ながら大きく息を吸って、握りこぶしを作った。
 下腹に力を入れて一気に玄関に突入した。
 後は、お前も知っている。」
「 いや、謝らなくてええよ。
 真っ先に逃げたのは、誰か知ってるやろ。
 お前たちを見捨てて逃げたんや。
 戻ってきてくれて、感謝してるで。
 恨んでない。」
「 そうか・・・・・・・・。
 ところで、Yは、どうしてる。」
「 いや、顔も見てないしメールも無い。」
「 こっちにも無いし、どうしたんやろ・・・。」
「 いつもならYが、真っ先に助けに行くのに、僕が突入するとき
 迷っていたぞ。
 何でか分かるか。」
「 分からん。
 でも、確かにあいつは、助けに来ると思う。」

しばらく、沈黙が続いた。



☆奇妙な物語HOMEページに戻る。
  奇妙な物語HOMEページ
[ 2007/01/23 18:07 ] 廃墟 | TB(0) | CM(0)

廃墟10 

Zが続けた。

「 あの2グループ、建物に入らなくて正解だな。
 帰るとき、もういなかったけど、女の子がいた7人のグループ、神
 戸のどこの大学かな。」
「 6人やろ。」
「 6人は男ばかりの方で、そっちは7人だよ。
 男3人、女4人だよ。」
「 おかしいな、男3人、女3人だったと思うで。」
「 もっとも若い女は3人で、一人は白い服を着た髪の長いおばさん
 というか、もうちょっと年がいっているような婆さんの感じだった。
 暗かったので、はっきりは見えなかったが。
 若い娘には、見張りがいるから親が付いてきたと思った。
  お前が、Yがなかなか帰ってこんなぁて言った時、お前の方をい
 ったん向いて、再度ワゴン車の方を見たらいなくなっていた。
 年寄りだから、ワゴン車に戻ったと思ったけど。」
「 そんな婆さん来るわけないやろ。
 おかしいで。」
「 そやなぁ。
 そのときはそうやろと思たけど。
 おかしいな。」

Zは、変な関西弁で真面目に答え、続けて言った。

「 Yに連絡してみる。
 Yは、ワゴン車に挨拶に行ったから分かる。
 近くで見てるはずだよ。」

Zは、7人にこだわっていた。
Zが携帯をかけたが、つながらないのでメールを入れ、返事待ちになった。
そして、昼飯を食べ終わって、それぞれの授業にわかれた。


☆奇妙な物語HOMEページに戻る。
  奇妙な物語HOMEページ
[ 2007/01/23 18:06 ] 廃墟 | TB(0) | CM(0)
プロフィール

Author:つぼつぼ7

ねこ

とけい
ブログランキング
・・・・参加ブログランキング・・・・

人気ブログランキング ブログランキング
ブログ王

・−−(押して帰ってネ!)−−・
最近のトラックバック
♪BGM
©Plug-in by PRSU

ポインタ・スイッチ




キーワードの写真ギャラリー
文中の単語をドラッグしてください。