闇4 

 白い封筒は、私に対する何かのメッセージなのでしょうか。
私はマンションの部屋がちょっと不安になって、大家さんに聞きました。

「 えっと、あの、部屋の鍵の交換とかは・・。」

大家さんは、立ち上がったまま答えました。

「 あ、管理業者に任せているので大丈夫。
 それじゃ。」

大家さんは、戸の向こうに消えて行きました。

“ 弱ったな・・。
 まあ、仕方が無い、しばらく保管するか。“

私が封筒を眺めていると、黒服のおじさんが部屋に入って来ました。

「 もう、話は終わりだよ。」

 私は部屋から追い出され、追い立てられるように通用扉から外に出ました。
私が扉から出ると、ピシャッと扉が閉まりました。

“ 何か、よく分からない家だな。”

 私は、塀越しに大家さんの家をフッと見上げました。
誰かの視線を感じたのかも知れません。
二階の窓のカーテンが、ゆらゆらと揺れていました。

“ 何か、手土産でも持って来るんだったな・・。”

私は、大家さんの家を後にし、トボトボと歩いて部屋に戻りました。
そして、白い封筒は、再び、私の机の中に戻りました。



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[ 2008/08/20 18:58 ] | TB(0) | CM(0)

闇3 

 私は座り直して、不安定な尻の辺りをモゾモゾしていると、大家さんがやって来ました。
大家さんは、60歳手前ぐらいの太って貫禄のあるオッチャンで和服を着ていました。

「 挨拶は、君かね。」
「 はい。」
「 今どき、挨拶に来るのも珍しいね。」
「 これから、お世話になりますから・・。」
「 ああ、そうだね。」
「 よろしくお願いします。」
「 あ、よろしく。」
「 ところで・・・、あの。
 これ、ポストに入っていたんですけど・・。」
「 手紙?」
「 大家さんからかも知れないと思いましたので・・。」
「 ワシじゃ無いよ。」
「 そうですか・・。」
「 おたくに来たものだろ。」
「 でも、宛先も差出人も書いてないんですよ。
 前に住んでいた人に出した物じゃないでしょうか・・。
 私はまだ引越し先を、あちこち連絡していないので・・・。」
「 そうかもしれないが、一応、持っていなさい。」
「 いいんですか?
 転送した方がよくはありませんか?」
「 でも、前に住んでいた人の引越し先を知らないし、その人の物とは限らないだろ。
 少なくとも、あなたが入居するまで郵便物は入ってなかったと聞くし・・・。
 それは、あなた宛だよ。」
「 はあ・・・。」
「 誰か、あなたを好きになった人が入れたんじゃないかね。」
「 えっ、思い当たりませんが・・・。」
「 じゃ。」

大家さんは腰を浮かせました。
おそらく、土産も無しに突然やって来たので、相手をするのが面倒になったのでしょう。
もう、話を切り上げたそうに見えました。



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[ 2008/07/21 10:23 ] | TB(0) | CM(0)

闇2 

 数日後、私は白い封筒を持って、マンションから東へ三筋ほど行った所にある大家の家に行ったのです。
大家の家は、塀に囲まれた日本家屋の大きな家でした。

“ うわっ、でかい!”

 大きな冠門に付いているインターホンを押すと、返事も無くいきなり門の横に付いている通用扉から、黒い服を着たおじさんが顔を出しました。

「 何?」
「 あの、新しくマンションに入りましたので、ちょっと挨拶に・・・。」
「 そう。」

 私は通用門から家の玄関まで案内され、これから大家さんに取り次ぐからここで待てと言われました。
しばらく待つと、おじさんが玄関に戻って来て、広い家の中の応接室に案内されました。
掛け軸の掛かった床の間のある和室で、花梨の机を前にして座布団に座って大家を待ちました。

“ どうも、広過ぎて居心地が悪いな・・。
 あれっ?”

一瞬、横を向いた時、黒い影が戸の隙間をフッと横切った気がしました。
しばらくそちらを見ていたのですが、シーンと静かで気配がありません。

“ 気のせいかな・・。”


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[ 2008/06/21 12:03 ] | TB(0) | CM(0)

闇1 

    闇


 白い封筒が一つ、ポストに入っていました。
封筒は糊付けされ、表裏何も書かれていませんでした。

「 何かの連絡だったら、私の名前が書いてあるだろうし・・。
 前の住人のものかな?
 大家さんに渡して、届けて貰った方が良さそうだ。」

 私は、マンションの一階の壁に設置してあるポストから封筒を取り出し、三階にある自分の部屋まで持って来ました。
そして、取り敢えず封筒を机の引き出しの中に放り込みました。
それは、あのマンションに引っ越して来て、10日目のことでした。

 私は、試験機を作っている会社に勤めて3年目になります。
勤め始めた1年目は、通勤だけで1時間半も掛かるマンションに住んでいました。
そこから通勤をしていたのですが、毎日通っていると通勤する事だけでも疲れを感じ、2年目の4月に引越しをすることにしたのです。
 それで、次に引越した2番目のマンションは会社から私鉄で2駅のところにあり、駅からの通勤時間も30分以内で場所的に良い物件でした。
その上、そのマンションは駅から近く、5階建ての3階で、部屋は2DKもあり、家賃は周囲と比較しても安い方だったと思います。
 でも、住んでいたのは1年間だけです。
今は、家賃が高く、通勤時間も以前より長く掛かる3番目のマンションに住んでいます。
 白い封筒が入っていたポストは2番目のマンションのポストで、そこに住み始めた私は、それを当初、以前の住人に宛てたものだと思っていました。




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[ 2008/06/04 21:05 ] | TB(0) | CM(0)
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