俺は、ハッとしてTに聞いた。
「 その子、赤い靴下を履いてなかったか。」
「 いや、靴下は分からない。
でも、秘密の部屋にあった写真の子のような気がした。
双子だよ。
顔を見た訳じゃないんだ。
何となくだよ。
足音を聞いたのは、確かだった。
確かに、小さな子供の足音だった。
何年も、この家に来ているけれど、こんなのは初めてだ。
今までと、何か違っていることはなんだろう。
僕は、昨日のことを考えた。
そして、お前が黒い箱の封印を解いたと思った。
あの紙だよ。
お前が剥がして、クルクル丸めて捨てたあの紙だよ。
僕は、蔵に行ってお前が捨てたあの紙を見つけて、元の位置に糊で
貼ろうと思ったんだ。」
「 それで、貼れたんか?」
「 いや、貼れなかった。
最後の日、僕は朝食を取って直ぐに蔵に行った。
鍵は、開いたままだった。
中に入って、床の板を持ち上げた時に、おばばが蔵の戸を開けて僕
は見つかった。
僕は、しばかれた。
おばばは、僕の様子を朝から見ていたらしい。
鋭いおばばだ。
僕が、いつもと違うことに、おばばは感付いていたんだ。
僕は母屋に連れて行かれて、板の間に正座して、おばばに質問攻
めにあった。
僕は、昨日お前と秘密の部屋に入ったことを言った。
ただ、部屋に入ろうとしたとき、おばばの叫び声が聞こえて、見つ
かったと思って蔵を飛び出したと言った。
だから、アルバムも黒い箱も知らなかったことになっている。
言うべきだったかも知れない。
でも、言い出せる雰囲気ではなかった。
部屋の中を調べていないことを知ったおばばは、安心したのか、僕
にスイカを切ってくれた。
そして、蔵の鍵は掛けられた。
それも、南京錠のついたチェーンが付け加えられて二重になった。
鍵を掛け忘れた伯父は、おばばにぼろくそに怒られた。
だから、お前が剥がした紙は、黒い箱に貼ることは出来なかった。」
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