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(連載中)                   


   12,鎮め箱

      §1 不安 (01〜04)
      §2 故郷 (05〜12)
      §3 龍珠 (13〜38)
      §4 仲間 (39〜  )

      ☆ (1月9日 鎮め箱45) 現在、設定変更のため停止しています。




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鎮め箱45 

美由紀が虫取り網を山の方に突き出して言った。

「 ほら、あの広葉樹の辺りが怪しいわ。
右の方にあるツタの絡まった少し大きめのクヌギの木が狙い目かも・・・。」
「 えっ!?」

それは俺と雄一郎が数年掛かって見付けた虫取りポイントだった。
美由紀はそれを現地に行く前に意図も簡単に言ってのけたのだ。
 俺と雄一郎は動揺していることを悟られないように美由紀に言った。

「 美由紀って、なかなか鋭いな。
あそこは虫取りポイントの一つなんや。」
「 これからあそこに行くんだよ。」

美由紀は俺と雄一郎の返事にニッコリ笑って頷いた。
そして、実際、美由紀は西の山に着くと虫の集まりそうな樹液の出る木を良く知っていたし、行動も素早かったのだ。
 その上、困ったことに俺と雄一郎は美由紀の昆虫に関する知識に驚かされることも多かった。
俺と雄一郎は、それまではカブトムシやクワガタについての知識には、かなりの自信を持っていた。
でも、それを見事に美由紀に打ち破られたのだ。
 さらに美由紀は、カブトムシやクワガタ以外の昆虫についても俺や雄一郎以上に知識が深かった。
俺と雄一郎は美由紀と出会うまでカブトムシやクワガタばかり追い掛けていた。
でも、美由紀に影響されて、それ以外の昆虫にも目を向けるようになって行ったのだ。
虫はカブトムシやクワガタばかりでは無かったことを、俺と雄一郎は美由紀に知らされたと言っていいと思う。





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[ 2010/01/09 11:14 ] 鎮め箱 | TB(0) | CM(0)

鎮め箱44 

 そして、美由紀は自分の虫取り網を、俺と雄一郎が肩に担いで空に突き出している二本の虫取り網にコンコンとぶつけて言った。

「 それにしても二人とも評判悪いわよ。
 洪水事件以外にも、落とし穴とか落書きとか・・・。」
「 まあ、いいじゃん。」
「 反省してないの?」
「 うん。」
「 ホント、悪ガキね。
 指名手配されてるわ。」
「 そうか・・・。」
「 wantedてとこね。」
「 西部劇みたいやな。」
「 賞金、付いてる?」
「 二人で100円ぐらい。」
「 うわっ、安っ!!」

 俺と雄一郎は虫取り網を美由紀の虫取り網にカンカンとぶつけた。
空には幾重にも重なった入道雲がムクムクと昇っている。
日はまだ高い。
虫取り網の影の高さがみんな同じになった。


 俺たち三人はズンズンと西の山に向かって農道を進んだ。
そして、山の手前で、もう俺と雄一郎は美由紀に驚かされたのだ。





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[ 2010/01/04 18:55 ] 鎮め箱 | TB(0) | CM(0)

鎮め箱43 


俺は分かったような口を利く女の子に言った。

「 何がそうだったなんだよ!」
「 本田の悪ガキ二人組みね。」
「 ゲッ!
 そんな話が村に流れているのか・・・。」
「 そうよ。」
「 参ったなァ・・・。」
「 あんた等に田圃をぐちゃぐちゃにされったって評判よ。
 大損害だって!」

 俺は女の子の話し振りから、コイツは話が出来そうなヤツだと思った。
雄一郎もおそらくそう思っているだろう。
俺は西の山を見ながら女の子に言った。

「 あんた等って言うのは話し難いし・・。
 俺、伊達廉太郎。
 廉太郎でいいよ。」

雄一郎が俺の前に顔を出して女の子に言った。

「 僕、本田雄一郎。」
「 じゃ、雄一郎ね。
 私、吉野美由紀。
 美由紀って呼んで。
 学校でもそう呼ばれているし。」
「 分かった。」
「 お〜け〜。」





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[ 2010/01/01 12:04 ] 鎮め箱 | TB(0) | CM(0)

鎮め箱42 

 俺と雄一郎が進んでいる農道には三つの虫取り網の影があった。
二つは並んで同じ高さだ。
でも、一つは少し短い。
農道を進むとその三つの影は石や雑草に邪魔されてデコボコに揺れている。
 後ろを歩く女の子が俺たちに質問した。

「 あんた等、この辺の子?」

俺と雄一郎は前を向いたまま答える。

「 俺、大阪。」
「 僕は名古屋。」
「 やっぱり違うんだァ!」

女の子は早足で俺の横に並んだ。

「 私、岡山よ。」

 三人が並んだ。
雄一郎、俺、女の子の順だ。
雄一郎と女の子は轍の上で、俺はその間の雑草の上を歩く。
俺は少し歩き難い。

「 で、どこの家に来てるの?」
「 本田の婆さんの家。」
「 僕たち、本田の婆さんの孫だよ。」
「 そうだったのかァ!」






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[ 2009/12/16 18:57 ] 鎮め箱 | TB(0) | CM(0)

鎮め箱41 

 俺と雄一郎は、不思議なヤツが現れたと思った。
女の子で虫取りに行くヤツは、今まで見たことが無かったからだ。
俺は念のため女の子に言った。

「 おまえ、山に行って、付いて来れへんかったら、置いて行くからな。」
「 やかましい!
 あんた等こそ、どこに虫がいるのか分かるの?」

 俺と雄一郎は呆気にとられた。
俺たちは言い返されてしまったのだ。
話を聞くと、どうやら岡山で男の子と一緒に虫取りをよくやっていたらしい。
説明を受けて納得した俺は、雄一郎に眼で同意を求めてから女の子に言った。

「 じゃ、行こっか。」
「 よし、行くぞ!」

女の子は虫取り網を、うれしそうにグルグル天に向かって回した。
 俺と雄一郎は二人並んで、西の山への舗装していない農道を歩く。
俺たちがあらかじめ見付けて置いた虫取りポイントを目指してだ。
女の子は後ろを付いて来た。
 夏の暑い日差しが俺たち三人を照り付ける。
軽トラックが何回もノロノロと走っていた農道には二本の轍の跡があった。
その二本の間には、踏まれて虐げられた雑草が地面にへばり付いて生えている。






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[ 2009/12/11 11:28 ] 鎮め箱 | TB(0) | CM(0)

鎮め箱40 

 小学校3年のオババの家に行った初日、いつものように俺と雄一郎は虫取り網を持ち、虫かごを肩からぶら下げて山に行こうとした。
オババの家を出て、三軒隣りの家の生垣を通過したとき、水色のワンピースを着た女の子が縁側からこちらを見ているのが見えた。
 俺は見えているのに挨拶をしないのもなんかなと思って、挨拶代わりに虫取り網を三回振った。
すると、その女の子はニコッと笑って俺たちに叫んだのだ。

「 私も行く。
 ちょっと待ってて!」

俺たちは生垣の横で立ち止まり、顔を見合わせて言った。

「 おい、今、行くって言ったよな・・?」
「 言ったような気がするけど・・・。」
「 女の子だろ。」
「 そうだよな。」
「 虫取りに行くって、変だよな・・・?」
「 何か、勘違いでもしてんじゃないか?」

 女の子は、一旦家の中に入って、直ぐに虫取り網を持って家から飛び出して来た。
そして、生意気にも俺たちを前に言ったのだ。

「 よし、行くぞ!」

女の子は俺たちと同じようなTシャツにズボンに長靴、それに男物のよれよれの麦藁帽子を被っていた。






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[ 2009/12/07 20:01 ] 鎮め箱 | TB(0) | CM(0)

鎮め箱39 


    §4 仲間



 洪水事件の次の年、小学校の3年になった夏、俺たち二人に新メンバーが一人加わった。
こいつが加わったことで、俺たちの仲間は三人になり、ますますパワーアップした。
 毎年、俺と雄一郎はオババにボロクソに怒られながらも、オババの家に行く事を楽しみにしていた。
親からは“俺たちは怒られに行っている”とまで言われた。
 実際に俺たちの悪事は、逐一、双方の親に報告されていた。
同時に、俺たちがいっぱい説教されていたこともだ。
それでも俺たちは誘い合ってオババの家に行った。
その理由は親にも言っていたことだが、山に虫がいたからだ。
 俺も雄一郎も、親子三人で街の中のマンションに住んでいる。
街の中では近くに虫を取りに行ける所なんて何処にも無い。
そこら辺にウロチョロしているのはゴキブリぐらいだ。
 カブトムシやクワガタが好きだった俺と雄一郎は、オババの家にいる間よく山に入って虫取りに行った。
山に行くときは、小学校2年まで俺と雄一郎の二人で行った。
気の合う二人で行くのは、それはそれで面白かったのだ。
 でも、小学校の3年からはメンバーが一人増えて三人になった。
その増えたメンバーは、オババの家の三軒隣りの山崎と言う家に来ていた吉野美由紀と言う女の子だ。
 この吉野って子は年齢も同じで、岡山の小学校に行っている女の子だった。
この子も俺たちと同じように、小学校の1年から、毎年、夏休みに実家に遊びに来ていたのだ。
何故、今まで俺たちと出会わなかったかと言うと、後で分かったことだが、来ていた日程がずれていたからだ。
三人共、地元から言えばお客さんだったので、地元の子供たちと話が合わなかった。





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[ 2009/12/03 19:54 ] 鎮め箱 | TB(0) | CM(0)

鎮め箱38 

 俺がよそ見しているのを見て雄一郎が言った。

「 おい、反省会するぞ!」
「 お、分かった。」

俺は振り返り、俺たちは恒例の反省会に入った。
 で、この日のスイカ反省会は長いものがあったのだ。
まず、雄一郎の説教時間の発表がある。

「 発表します!
 今日の説教時間、なんと74分!!」
「 うお〜!
 すげぇ〜〜!!」

俺は妙に感動した。
これは今までの最長記録だ。
 でも、時間に感動するのはいいが、この日の反省会の気分にはかなり重いものがある。
それは、後始末がどうなるのかと言う大きな不安があったからだ。
村の人たち一軒一軒に、明日から謝って回るのは大変だ。
それに、ハゲたおっさんの家に行ったら殴られるかもしれないとビビっていたのだ。
 しかし、その日の反省会が終わってからも、次の日になってからも、オババから後始末の話は出なかった。
そして、俺たちの生活は元通りとなった。
 オババに怒られ、足も痛かったけれど、特に村の人たちからは何も言われなかったのだ。
それで、俺たちは“オババが村の人たちに手をまわしてくれたんだ”と心の中で感謝した。
でも、オババには感謝も何も言わなかった。
死んでも、オババに“ありがとう”なんて言えるもんか。
 根性オババと長男夫婦は、跡継ぎとして、この悪ガキ二人を考えていたのだろうか。
毎年、懲りもせず二人に遊びに来るように、双方の親に連絡を入れていたようだ。





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[ 2009/11/28 15:37 ] 鎮め箱 | TB(0) | CM(0)

鎮め箱37 

俺は気持ちが悪くって服の袖で顔を拭う。

「 くそ〜〜!」

そのとき、奥の部屋からオババの声だけが響いて来た。

「 スイカの種をばら撒くんじゃねぇ!!
 後で、ちゃんと拾っとけ!!」

 俺たちは首をすくねて顔を見合わせる。
もう、これ以上の説教は願い下げだ。

「 あれっ・・・・。」

俺は台所の上がり框を見た。
そこにネコの茶碗が一つ置いてある。

“ 置いてあるな・・・・。”

普段、茶碗はネコの食事時以外は台所の流しの横に置いてあるのだ。
でも、ネコの姿は無い。

“ やっぱり、ネコのやつ、サンマ貰ったのか・・・。”

お駄賃を貰ったネコは、もう外に夜遊びに行ったんだろう。





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[ 2009/11/25 19:05 ] 鎮め箱 | TB(0) | CM(0)