奇妙な物語 

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                         (☆7月21日 闇3)


☆帰って来ました、また、始めます。 byつぼつぼ7



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四枚の写真3 

 私は座り直して、不安定な尻の辺りをモゾモゾしていると、大家さんがやって来ました。
大家さんは、60歳手前ぐらいの太って貫禄のあるオッチャンで和服を着ていました。

「 挨拶は、君かね。」
「 はい。」
「 今どき、挨拶に来るのも珍しいね。」
「 これから、お世話になりますから・・。」
「 ああ、そうだね。」
「 よろしくお願いします。」
「 あ、よろしく。」
「 ところで・・・、あの。
 これ、ポストに入っていたんですけど・・。」
「 手紙?」
「 大家さんからかも知れないと思いましたので・・。」
「 ワシじゃ無いよ。」
「 そうですか・・。」
「 おたくに来たものだろ。」
「 でも、宛先も差出人も書いてないんですよ。
 前に住んでいた人に出した物じゃないでしょうか・・。
 私はまだ引越し先を、あちこち連絡していないので・・・。」
「 そうかもしれないが、一応、持っていなさい。」
「 いいんですか?
 転送した方がよくはありませんか?」
「 でも、前に住んでいた人の引越し先を知らないし、その人の物とは限らないだろ。
 少なくとも、あなたが入居するまで郵便物は入ってなかったと聞くし・・・。
 それは、あなた宛だよ。」
「 はあ・・・。」
「 誰か、あなたを好きになった人が入れたんじゃないかね。」
「 えっ、思い当たりませんが・・・。」
「 じゃ。」

大家さんは腰を浮かせました。
おそらく、土産も無しに突然やって来たので、相手をするのが面倒になったのでしょう。
もう、話を切り上げたそうに見えました。



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[ 2008/07/21 10:23 ] | TB(0) | CM(0)

闇2 

 数日後、私は白い封筒を持って、マンションから東へ三筋ほど行った所にある大家の家に行ったのです。
大家の家は、塀に囲まれた日本家屋の大きな家でした。

“ うわっ、でかい!”

 大きな冠門に付いているインターホンを押すと、返事も無くいきなり門の横に付いている通用扉から、黒い服を着たおじさんが顔を出しました。

「 何?」
「 あの、新しくマンションに入りましたので、ちょっと挨拶に・・・。」
「 そう。」

 私は通用門から家の玄関まで案内され、これから大家さんに取り次ぐからここで待てと言われました。
しばらく待つと、おじさんが玄関に戻って来て、広い家の中の応接室に案内されました。
掛け軸の掛かった床の間のある和室で、花梨の机を前にして座布団に座って大家を待ちました。

“ どうも、広過ぎて居心地が悪いな・・。
 あれっ?”

一瞬、横を向いた時、黒い影が戸の隙間をフッと横切った気がしました。
しばらくそちらを見ていたのですが、シーンと静かで気配がありません。

“ 気のせいかな・・。”


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[ 2008/06/21 12:03 ] | TB(0) | CM(0)

闇1 

    闇


 白い封筒が一つ、ポストに入っていました。
封筒は糊付けされ、表裏何も書かれていませんでした。

「 何かの連絡だったら、私の名前が書いてあるだろうし・・。
 前の住人のものかな?
 大家さんに渡して、届けて貰った方が良さそうだ。」

 私は、マンションの一階の壁に設置してあるポストから封筒を取り出し、三階にある自分の部屋まで持って来ました。
そして、取り敢えず封筒を机の引き出しの中に放り込みました。
それは、あのマンションに引っ越して来て、10日目のことでした。

 私は、試験機を作っている会社に勤めて3年目になります。
勤め始めた1年目は、通勤だけで1時間半も掛かるマンションに住んでいました。
そこから通勤をしていたのですが、毎日通っていると通勤する事だけでも疲れを感じ、2年目の4月に引越しをすることにしたのです。
 それで、次に引越した2番目のマンションは会社から私鉄で2駅のところにあり、駅からの通勤時間も30分以内で場所的に良い物件でした。
その上、そのマンションは駅から近く、5階建ての3階で、部屋は2DKもあり、家賃は周囲と比較しても安い方だったと思います。
 でも、住んでいたのは1年間だけです。
今は、家賃が高く、通勤時間も以前より長く掛かる3番目のマンションに住んでいます。
 白い封筒が入っていたポストは2番目のマンションのポストで、そこに住み始めた私は、それを当初、以前の住人に宛てたものだと思っていました。




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[ 2008/06/04 21:05 ] | TB(0) | CM(0)

栞37 

 次の日、博美を保育所のバスに送って行った後、夫の部屋の換気をしようと部屋に入りました。
外の明かりが、カーテンの隙間から部屋に入っています。

「 あれっ?」

 机の上に眼を遣るとチョコが二つ並んで置いてあります。
黒地に赤と金の筋の入ったシックな包装のチョコが右に、赤地を主体に金の線の入った明るい包装のチョコが左に並んでいます。
博美が、朝、私の知らないうちに置いたのでしょう。

「 博美だわ、私と張り合ってるのね、ふふ。
 出張から帰って来たら、二つ並んでいるから驚くと思うわ。
 さて、どちらを先に食べるのかな・・。」

私は、微笑んで、ライバルのチョコを見るために机に近付きました。

「 えっ、どうして・・・。」

 私は、机の手前で立ち止まりました。
カーテンの隙間から差し込んできた光が、二つのチョコを照らしていました。
そして、左のチョコの上には、リルケの詩集に挟んであった栞が乗せてあったんです。


  完了

 読んで頂きありがとうございました。

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[ 2008/04/01 19:55 ] | TB(0) | CM(0)

栞36 

 バレンタインディから、3日経ちました。
私はチョコを夫に渡すかどうか悩んでいました。
夫も しおりちゃんのことは、覚えている筈です。
渡せば、過去の出来事を思い出すのは当然のことです。
 そしと、私は、ずっとしおりちゃんのことも考えていました。
どうして、チョコを食べていなかったことに気が付いたんだろう。
遺書も無く、突然に死んでしまった。
 しおりちゃんは、私がチョコを交換したことを知らなかった。
もし、交換していなかったら・・・。
私の考え過ぎでしょうか。
夫に聞くことも出来ない。
どうしたらいいのか・・・・・・。
 暗く長いトンネルだったと思います。
でも、3日目、私は思い切りました。
私には、家庭がある。
私は、今の家庭を大事にしたいと思いました。
 この部屋は、私と夫と博美の世界です。
しおりちゃんのことは、折を見て、また、夫に聞く機会もあるだろう。
今は、チョコの苦さを振り切ろう。
私は、夫にチョコを贈ることを決心しました。
 明日は、夫が帰って来ます。
私は、夫の部屋に入り、机の上にチョコを置きました。

「 これでいい。」

黒地に赤と金の筋の入ったシックな包装のチョコが机の上にありました。
 部屋を出るとき、本棚の下の方をチラッと見ました。
そこには、しおりちゃんに貰っただろう夫の詩集がひっそりと並んでいました。
私は、もう終わったことだと思いながら、電気を消して部屋を出ました。



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[ 2008/03/27 20:51 ] | TB(0) | CM(0)

栞35 

 私は、顔を上げました。
すると、博美が私の前に回って斜めの角度から、少し俯いてから顔を上げ、しおりちゃんのように私を上目使いに見たのです。
そして、言いました。

「 どうしたの?
 チョコ、食べよう。」
「 そうね、食べよう。」
「 今、食べてね。」
「 後じゃダメ?」
「 ダメ、今だよ。」
「 分かった。」

 私と博美は、顔を見合わせてチョコを取り出し、お互い口に入れました。
甘みを抑えたビターな味が口にひろがりました。
博美が私に言いました。

「 ちゃんと食べたね。」
「 食べたわよ。」
「 忘れることあるからね。」

博美は、私が食べるのを見届けると部屋に戻って行きました。



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[ 2008/03/21 20:57 ] | TB(0) | CM(0)

栞34 

 部屋に戻って来ました。
リビングに入って、直ぐに、私は博美に言いました。

「 チョコ、食べたいでしょう。
 バレンタインのチョコ、あげるから、食べよう。」
「 うん、私もチョコ、持ってくる。」

 私は、台所に置いてあった義理チョコを取りに行きました。
博美は、子供部屋に義理チョコを取りに走りました。
そして、リビングの入り口で、私は博美とチョコの交換をしたのです。

「 それじゃ、チョコ、渡すね。」
「 私も。」

 同じチョコの交換です。
そう、同じチョコを交換したことが前にもあった。
私は、リビングの扉の前で突っ立ったまま、博美のくれたチョコを手に持って見ていました。
そうです、俯いてチョコを見ながら、しおりちゃんのことを思い出していたのです。

“ あの時、箱を落としていなかったら・・・。”

博美の近寄って来る足元が、眼の端に見えました。



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[ 2008/03/15 10:40 ] | TB(0) | CM(0)

栞33 

 今日は、2月14日、バレンタインデイです。
博美は、元気に保育所に行きました。
でも、博美のバレンタインのチョコは、机の上に置いたままでした。
保育所には、持って行かなかったのです。
渡す相手は、保育所の子ではなかったのです。
 3時半になって、博美が保育所から帰ってきました。
バスから降りてきた博美に言いました。

「 チョコ、持って行くの忘れたの?」
「 ううん、違うわ。」
「 誰にあげるの?」
「 そのうち、分かるわ。」
「 ふ〜ん、妙に大人っぽい言い方ね。」
「 そうね、ふふ。」

博美とは、友達のような会話になってしまうこともあります。
博美は、私を見上げて笑いました。

“ あっ、そうか・・・。”

 私は、あげる相手が、誰か分かりました。
博美は、夫が帰ってくるのを待っているんです。
博美は、父親が大好きです。
私より父親の方に、懐いていと言っても良いと思います。
私と博美は、ライバルなのかも知れません。
女の子は、子供のときから女なのかと思ってしまいます。



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[ 2008/03/09 20:35 ] | TB(0) | CM(0)

栞32 

 私は、止められなかったことで、加奈ちゃんも自分を責めているんだと思いました。

「 分からないわよ、加奈ちゃんにだって・・。」
「 でも、私はしおりちゃんの話を聞いているのよ。」
「 聞いていても、まさか、そこまでは考えないでしょう。」
「 それは、そうだけど・・。
 様子を見ていたのだから、何か気が付いたことがあった筈よ。」
「 でも、加奈ちゃんのせいじゃないよ。」
「 でもね・・。」
「 気にすることは無いわ。」
「 う〜ん・・・・・。」
「 私は時間は掛かったけれど、何とか振り切れそう・・。
 過ぎてしまったことだし・・・。」

加奈ちゃんは、俯き加減にテーブルに眼を落としました。
そして、しばらくの沈黙の後、口を開きました。

「 そうね・・・。
 そうよね・・・・。
 うん・・・・・・。
 お互い気にしないことにするしかないわね。
 最後には・・・。
 お互い・・。」

加奈ちゃんは、加奈ちゃんなりに悩んでいたことが分かりました。

“ そう、お互い気にしないことにするしかない、でも・・・・。”

 それから、私たちは、短時間、話をして喫茶店を出ました。
私は、色々聞きたいと思っていましたが、ちょこっとだけしか聞きませんでした。
聞けなかったと言ったほうが良いのかもしれません。
少なくとも、しおりちゃんは、チョコを交換したことは知らなかったんだと思いました。
 そして、加奈ちゃんには言いませんでしたが、話している途中から、私にはある疑問が湧いて来たのです。

“ まさか・・。”

私は、もやもやしたものが残ったまま帰路につきました。



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[ 2008/03/03 21:07 ] | TB(0) | CM(0)
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